7日付ビジネスアイ紙に掲載されたコラムです。エイズ予防指針、何かと話題に・・・なりませんね。
《エイズ予防指針改正 絵に描いた餅では困る》
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120207/mca1202070501000-n1.htm
この先5年間の日本のエイズ政策を方向付ける改正エイズ予防指針が1月19日、厚生労働省から告示された。といっても、えっ、なに、それ? という人の方が多いだろう。「ゆるやかに進行する危機」というレベルの現象であるエイズの流行にまできちんと目配りできる政治家は、いまの日本には少ないだろうし、厚労省の中ですらエイズ対策は高い優先順位を持つ課題とはみなされていないからだ。
ただし、エイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染はゆっくりとではあるが、確実に拡大しており、国内のHIV感染者・エイズ患者数は報告ベースでも2万人に達しようとしている。流行は終わったわけでも、下火になったわけでもないし、政治の指導者が関心を示さなければ感染を見合わせてくれるほど、ウイルスもお人好しではない。わが国のエイズの流行は今後5年の間に一段と拡大を続けるのか、それとも拡大に歯止めがかかるのか。成否はこの指針にかかっているかもしれないので、少しだけ説明しておこう。
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わが国では1999年4月に伝染病予防法、性病予防法、エイズ予防法の3法を廃止統合して感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)が施行され、この法律の枠組みに沿って感染症対策が進められている。廃止3法の重点があくまで予防に置かれていたのに対し、感染症法は、予防と同時に患者の治療やケアの提供にも目配りしなければ、感染症には対応できないという考え方が強く打ち出された法律だ。
この新しい法律のもとで「総合的に予防のための施策を推進する必要があるもの」として、エイズ予防指針と性感染症予防指針が厚生労働大臣告示として制定され、ほぼ5年ごとに見直されることになった。エイズ予防法、性病予防法の廃止に伴い、対策の位置づけを明確にするために設けられた指針と言ってもいい。
エイズ予防指針の改正は2006年に続き、2度目となる。指針見直しの作業は昨年1月から9月まで、わが国を代表するエイズ研究者や臨床医、エイズ対策の現場のNGO(非政府組織)やHIV陽性者団体の代表ら約20人の委員で構成されるエイズ予防指針作業班で進められた。作業班の報告書では、次の4点が改正のポイントとなっている。
・「検査・相談体制の充実」の位置づけの強化
・個別施策層に対する検査について、目標設定の必要性を明記
・地域における総合的な医療体制の充実
・NGO等との連携の重要性を明記
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私は一応、9回にわたる作業班の会合をすべて傍聴したので、その範囲で議論の要点をまとめてみた。
(1)現時点で必要な対策を網羅的に取り上げ、目配りがきいた指針だが、実施体制が伴わない。
(2)医療の提供に関してはエイズ拠点病院体制継続が打ち出された。ただし、HIV陽性者が歯科や人工透析などHIV関連以外の治療で他の医療機関を訪れる機会も増え、医療ニーズの多様化に対応する必要がある。
(3)予防と支援は切り離すことができないHIV/エイズ対策の両輪であり、対策の有効性を確保する意味でも少数者の人権に配慮した施策の遂行が求められる。
実は作業班の中では「指針の制定時や5年前の改正の議論の際、必要なことはほぼもれなく取り上げられているのに、実行が伴っていない。この結果、5年たってもHIV感染は相変わらず拡大を続けている」との問題意識が議論の初期段階から共有されていた。平たく言えば「指針が絵に描いた餅のままでは困る」ということだ。
このため、改正指針では「行政とNGO等の連携」という文言がしつこいほど随所に出てくる。エイズの流行は行政だけで解決できる課題ではないということが、行政側にもNGOの側にも共有されるようになった。この点が、改正作業の最も大きな成果だった。5年後にそういえるよう指針を活用していきたい。
by 宮田一雄
3336 ホイットニー・ヒュース…